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不動産査定額の算定方法|仲介と買取の違いを専門家が解説

2026-10-13

相続した家の査定額、どう決まるかご存知ですか?

ご両親が遺してくれた、思い出の詰まったご実家。しかし、いざ相続してみると「この先どうすれば…」と、途方に暮れてしまう方は少なくありません。「売るべきか、貸すべきか」「売るなら『仲介』と『買取』、どちらが良いのだろう」「そもそも、この家の価値は一体いくらなのだろうか」――次から次へと疑問が湧き、不安な気持ちになるのは当然のことです。

特に不動産業者から提示される査定額は、一見するとその根拠が不透明に感じられるかもしれません。「買取業者の提示額は安い気がするけれど、仲介業者の査定額は会社によってバラバラで、何を信じれば良いのか分からない」という声もよく耳にします。

この記事では、司法書士・行政書士という専門家の立場から、不動産業者が査定額を算出する際の「3つの算定方法」の仕組みを説明し、「仲介」と「買取」それぞれのメリット・デメリットを比較します。不動産業者の言いなりになるのではなく、ご自身で査定の仕組みを理解し、冷静に判断するための知識を身につけていただくことが目的です。

この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況に合った最適な売却方法を選択するための、確かな判断基準が見つかるはずです。不動産売却の全体像については、相続不動産の売却に関する基礎知識で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

不動産業者が査定額を出す「3つの算定方法」の仕組み

不動産業者が提示する査定額は、決して担当者の「勘」で決められているわけではありません。主に以下の3つの算定方法を組み合わせて、客観的な根拠に基づいた価格を算出しています。この「査定額の算出過程」を知ることが、提示された金額の妥当性を判断する第一歩となります。

取引事例比較法:近隣の売買データから算出する

最も一般的で、特に中古住宅の査定で中心となるのが「取引事例比較法」です。これは、売却したい不動産の近隣で、条件が似ている物件(所在地、広さ、築年数、間取り、駅からの距離など)が「実際にいくらで売れたか」という過去の成約価格データを基に査定額を算出する方法です。

不動産業者は、不動産流通標準情報システム(レインズ)などで蓄積された膨大な取引データを参照し、「A物件(築10年・80㎡)が2,000万円で売れたから、今回の物件(築15年・75㎡)は少しマイナス査定かな」「B物件より日当たりが良いからプラス査定」といった形で、個別の長所・短所を価格に反映させていきます。市場の需要と供給が直接的に反映されるため、現実的な売却可能価格に近い金額が出やすいのが特徴です。

原価法:建物の再建築費用と経年劣化で評価する

「原価法」は、主に建物の価値を評価する際に用いられる方法です。その考え方は、「もし今、同じ建物を新しく建てたらいくらかかるか(再調達原価)」を算出し、そこから築年数に応じた価値の減少分(減価修正)を差し引くというものです。

計算式:再調達原価 - 減価修正額 = 現在の建物価格

特に相続で取得した古い住宅の場合、木造戸建ての法定耐用年数(22年)を超えているケースが多く、この方法では建物の資産価値がゼロに近い、あるいはゼロと評価されることも少なくありません。ただし、これはあくまで計算上の評価であり、リフォーム状況や管理状態が良ければ、実際の売買では価値が認められる場合もあります。なお、土地の価格は取引事例比較法などで別途評価され、建物価格と合算されます。

収益還元法:賃貸した場合の収益性で価値を決める

「収益還元法」は、その不動産が将来的にどれくらいの収益(主に家賃収入)を生み出す力があるか、という視点から価値を算出する方法です。主にアパートやマンション一棟といった投資用不動産の査定で使われます。

計算式:一年間の純収益(家賃収入から必要経費等を差し引いた額) ÷ 還元利回り = 収益価格

相続したご実家が駅に近い、大学が近いなど賃貸需要が見込めるエリアにある場合、この収益還元法を参考に査定額が算出されることもあります。一般的な住宅売却ではメインの評価方法にはなりませんが、不動産の持つ「収益性」というもう一つの価値基準を示すものとして知っておくと良いでしょう。相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は原則として非課税ですが、固定資産税や相続税など、別途確認すべき税金があります。

不動産査定額の3つの算定方法(取引事例比較法、原価法、収益還元法)の特徴をアイコンとテキストで分かりやすく解説した図解。

「仲介」と「買取」どちらを選ぶ?メリット・デメリットを徹底比較

査定の仕組みを理解したところで、次はいよいよ具体的な売却方法の選択です。「仲介」と「買取」には、それぞれ一長一短があります。ご自身の状況や優先順位に合わせて、どちらがより適しているかを見極めることが重要です。「時間」「価格」「手間」「リスク」の4つの観点から、両者を比較してみましょう。

比較項目仲介買取
売却価格市場価格に近く、高い市場価格の6~8割程度で、安い
売却期間3ヶ月~1年以上かかることもあり、長い最短数日~数週間で、短い
手間内覧対応など、手間がかかる不動産会社とのやり取りのみで、手間が少ない
契約不適合責任売主が負う(リスクあり)免責特約を設けることが多い(ただし例外あり)
仲介手数料必要不要
「仲介」と「買取」の比較

【高く売りたい方向け】仲介のメリット・デメリット

「仲介」とは、不動産会社に買主を探してもらう方法です。不動産会社は売主と買主の間に入り、売買契約が成立するようにサポートします。

メリット
最大のメリットは、市場価格に近い高値で売却できる可能性が高いことです。広く買主を募集するため、その物件の価値を正当に評価してくれる買主と出会えるチャンスが広がります。

デメリット
一方で、いつ売れるか分からないという点がデメリットです。買主が見つかるまで数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあります。また、購入希望者が見つかるたびに内覧の対応をする手間も発生します。
そして、最も注意すべきなのが「契約不適合責任」です。これは、売却後に物件に契約書に記載のない欠陥(雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障など)が見つかった場合、売主が修繕費用や損害賠償などを負う責任のことです。特に古い家は、売主自身も気づいていない隠れた瑕疵が潜んでいるリスクがあり、この責任は大きな負担になりかねません。万が一、抵当権付きの不動産を相続している場合などは、さらに手続きが複雑になります。

【早く売りたい方向け】買取のメリット・デメリット

「買取」とは、不動産会社に直接物件を買い取ってもらう方法です。買主は不動産会社そのものになります。

メリット
最大のメリットは、スピーディーに現金化できることです。不動産会社が買主となるため、価格の合意さえできれば、最短数日から数週間で売却が完了します。売却活動を行う必要がないため、内覧対応の手間や、ご近所に売却を知られる心配もありません。仲介手数料も不要です。
そして、古い家を売却する上で非常に大きな利点となるのが、「契約不適合責任が免責される」ことです。買取では、契約で売主の契約不適合責任を免責または限定する条項が設けられることが多く、売却後の責任を軽減できる場合があります。ただし、売主が知っていた不具合を告げなかった場合などは、責任を問われる可能性があります。

デメリット
デメリットは、売却価格が仲介に比べて安くなる点です。一般的に市場価格の6~8割程度が目安となります。これは、不動産会社がリフォームなどを行って再販売するための費用や利益を、あらかじめ買取価格から差し引いているためです。売れない土地や農地などの処分に困っている場合、相続土地国庫帰属制度も選択肢の一つとなります。

あなたの状況に合うのはどっち?選択のためのチェックリスト

ご自身の考えや状況を整理し、どちらの方法が合っているか判断するためのチェックリストです。YESが多い方を検討してみましょう。

不動産売却の「仲介」と「買取」どちらが自分に合っているかを判断するためのチェックリスト。高く売りたい人は仲介、早く確実に売りたい人は買取が向いていることを示している。

【実践ガイド】不動産情報ライブラリで査定額の妥当性を調べる方法

不動産業者から査定額を提示された際、その金額が高いのか安いのか、ご自身で判断する「物差し」を持つことは非常に重要です。そこで役立つのが、国土交通省が公開している「不動産情報ライブラリ」です。これは、過去に実際に行われた不動産取引の価格情報などを、地図上で誰でも無料で見ることができる画期的なシステムです。基本的な使い方を把握し、査定額を確認するための参考情報として活用しましょう。

ステップ1:サイトにアクセスし、自宅の場所を検索する

まずは「不動産情報ライブラリ」のウェブサイトにアクセスします。トップページに表示される地図や住所検索窓から、査定したいご実家の場所を特定してください。地図をスクロールしたり、拡大・縮小したりしながら、目的の地点を表示させます。

ステップ2:「不動産取引価格情報」を表示し、条件を絞り込む

地図画面の左側にあるメニューから「不動産取引価格情報」にチェックを入れます。すると、地図上にオレンジ色の点が表示されます。これが過去の取引事例です。次に、より参考になるデータを得るために条件を絞り込みます。土地価格の相場を確認したい場合は「土地」、建物付きの実家全体の取引事例を確認したい場合は「宅地(土地と建物)」など、目的に応じて物件種別を選び、取引時期を「過去2年」などに設定すると比較しやすくなります。

ステップ3:近隣の取引事例から「坪単価」の相場を読み解く

ご実家の近隣にあるオレンジ色の点をクリックしてみましょう。すると、「取引総額」「面積」「建物の築年」などの詳細情報が表示されます。ここで重要なのが、ご自身で「単価」を計算してみることです。

例えば、「取引総額3,000万円」「面積150㎡」という事例があれば、3,000万円 ÷ 150㎡ = 20万円/㎡ となります。坪単価に換算するには、この平米単価に3.3を掛けます(20万円 × 3.3 ≒ 66万円/坪)。

いくつかの近隣事例でこの計算を行い、平均的な単価を把握することで、そのエリアの土地価格の相場観を掴むことができます。この相場観は、不動産業者の査定額が妥当な範囲内にあるかを確認するための重要な判断材料になります。ただし、土地建物一体の取引事例では建物価値も含まれるため、土地価格そのものとして扱わないよう注意が必要です。

タブレットで不動産情報ライブラリを使い、自宅近隣の取引価格を調べている様子。査定額の妥当性を自分で確認している。

査定依頼から売却完了までの注意点

実際に売却に向けて動き出す際に、思わぬトラブルに陥らないための注意点を、専門家の視点から解説します。事前の準備と正しい知識は、円滑な売却を進めるうえで重要です。

査定は複数社に依頼し、査定の根拠を確認する

査定を依頼する際は、複数の不動産会社にお願いしましょう。1社だけの査定額では、それが適正価格なのか判断できません。そして、単に一番高い査定額を提示した会社を選ぶのは危険です。重要なのは、「なぜその査定額になったのか」という根拠を、取引事例などを示しながら具体的に、かつ論理的に説明できる担当者かどうかを見極めることです。「この地域の成約事例で、最も参考にされたのはどの物件ですか?」といった質問を投げかけてみるのも良いでしょう。相続財産が多岐にわたる場合は、まず財産目録を作成して全体像を把握することが大切です。

売却の前提となる「相続登記」は完了していますか?

司法書士として、最もお伝えしたい注意点の一つです。不動産を売却するためには、その前提として、亡くなった方から相続人へ不動産の名義を変更する「相続登記」が完了している必要があります。この手続きが済んでいなければ、買主への所有権移転登記ができないため、通常は売却完了までに相続登記を済ませる必要があります。

2024年4月1日からは相続登記が義務化され、正当な理由なく手続きを怠ると過料の対象となる可能性もあります。もし相続登記がまだお済みでない場合は、売却の相談と並行して、速やかに司法書士へ依頼してください。特に、何代にもわたって相続登記が放置されている数次相続が発生しているケースは、手続きが非常に複雑になるため、早期の相談が不可欠です。

参照:相続登記の義務化に関する法務局資料

契約書で確認すべき重要事項(契約不適合責任の範囲など)

売買契約書に署名・捺印する前には、内容をしっかりと確認することが重要です。特に以下の点は注意深くチェックしてください。

  • 買取の場合:「契約不適合責任免責」の条項が、契約書に明確に記載されているか。これが買取の最大のメリットですので、必ず確認しましょう。
  • 仲介の場合:契約不適合責任を負う期間や、責任の範囲がどのように定められているか。通常は数ヶ月程度に限定することが多いですが、その条件を確認します。

その他、手付金の額や引き渡しの時期など、少しでも疑問に思う点があれば、安易に署名せず、納得できるまで説明を求めてください。不動産の売却は、遺産承継業務の中でも特に専門的な知識を要する手続きです。万が一、権利証にあたる登記識別情報を紛失している場合でも、代替手段がありますのでご安心ください。

まとめ:冷静な判断が、大切な資産を守る第一歩です

相続した大切な不動産の売却は、多くの方にとって初めての経験であり、不安を感じるのは当然です。しかし、基本的な知識を押さえておけば、情報を比較しながら冷静に判断しやすくなります。

  • 査定額の3つの仕組み(取引事例比較法・原価法・収益還元法)を理解する。
  • 「仲介」と「買取」のメリット・デメリットを知り、自分の状況に合った方を選ぶ。
  • 「不動産情報ライブラリ」を活用し、ご自身で相場観を掴む。
  • 売却の前提となる「相続登記」などの法的な手続きを怠らない。

これらのポイントを押さえ、冷静に一つひとつ手順を踏んでいくことが、ご両親が遺してくれた大切な資産を守り、ご自身が納得のいく売却に近づくための現実的な進め方です。

相続登記の手続きが分からない、不動産会社とのやり取りに不安がある、あるいは相続人が複数いて話がまとまらないなど、お困りのことがございましたら、早めに専門家へ相談することをご検討ください。私たち専門家は、法律的な手続きのサポートはもちろん、皆様が安心して次のステップへ進めるよう、親身にお話を伺います。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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