未成年者の相続放棄|方法・必要書類・注意点を専門家が解説

【まず確認】あなたとお子様の状況は?相続放棄の進め方フローチャート

大切なご家族を亡くされ、心身ともにお辛い状況の中、お子様のために慣れない手続きを進めなければならないことに、大きな不安を感じていらっしゃることでしょう。特に、お子様が未成年者の場合の相続放棄は、普段聞き慣れない「利益相反」といった言葉も出てくるため、戸惑われるのも無理はありません。

まずはご自身の状況を整理し、どのような手続きが必要になるのかを一緒に確認していきましょう。以下の簡単なフローチャートで、あなたが進むべき道のりを確認してみてください。

未成年者の相続放棄・手続き診断

質問1:亡くなった方(被相続人)に借金などのマイナスの財産はありますか?

  • YES → 質問2へ
  • NO → 相続放棄をすべきか慎重な検討が必要です。プラスの財産が多い場合は、相続することも選択肢になります。

質問2:親権者であるあなたも、お子様と一緒に相続放棄をしますか?

  • YES(親子で一緒に放棄する)
    利益相反にはなりません。
    親権者として、お子様の相続放棄手続きを進めることができます。
  • NO(自分は相続し、子だけ放棄させたい)
    利益相反にあたります。
    家庭裁判所で「特別代理人」を選任する必要があります。

いかがでしたでしょうか。ご自身の状況がどちらのパターンに当てはまるか、大まかにご理解いただけたかと思います。この記事では、それぞれのパターンについて、手続きの方法や注意点を詳しく解説していきますので、どうぞご安心ください。

未成年者の相続放棄、なぜ親権者の手続きが必要?

そもそも、なぜお子様の相続放棄を親であるあなたが行う必要があるのでしょうか。それは、法律上、未成年者は一人で契約などの重要な法律行為を完結させることができないと定められているからです。

相続放棄は、「相続人としての権利義務を一切受け継ぎません」という意思表示をする、非常に重要な法律行為です。もし、社会経験の少ない未成年者が一人で判断してしまうと、不利益を被ってしまう可能性があります。そのため、親権者などの「法定代理人」が、本人に代わって手続きを行うことになっているのです。

つまり、親権者であるあなたが手続きをすることは、大切なお子様を法的に保護するために不可欠な役割だといえるでしょう。

注意すべき「利益相反」とは?ケース別で見る判断基準

未成年者の相続放棄で、最もつまずきやすいのが「利益相反」という考え方です。言葉だけ聞くと難しく感じますが、「親と子の間で、利益がぶつかり合ってしまう状況」と考えると分かりやすいかもしれません。

相続において、親権者と未成年の子が同時に相続人になるケースは少なくありません。このとき、子の相続放棄の判断を親権者に委ねてしまうと、親自身の利益を優先し、結果的に子の利益が損なわれる事態が起こり得ます。このような事態を防ぐために、法律は「利益相反」というルールを設けているのです。

具体的にどのような場合に利益相反になるのか、ならないのかを、ケース別に見ていきましょう。

利益相反にならないケース:親権者も子と一緒に相続放棄する場合

最も分かりやすいのが、親権者であるあなたも、お子様と一緒に相続放棄をするケースです。これは、利益相反にはあたりません。

なぜなら、お子様が相続放棄をしても、一緒に放棄するあなたの相続分が増えることはないからです。親子ともに「相続しない」という同じ方向を向いているため、そこに利害の対立は生まれません。

この場合は、あなたが親権者(法定代理人)として、お子様の代理で家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことができます。手続きは比較的シンプルに進めることが可能です。

利益相反になるケース:親権者は相続し、子だけが相続放棄する場合

一方で、親権者であるあなたは相続財産を受け取り、お子様だけ相続放棄をさせたいというケースは、典型的な利益相反にあたります。

例えば、相続人があなた(配偶者)とお子様の2人だったとします。法定相続分は、それぞれ2分の1ずつです。ここでお子様だけが相続放棄をすると、お子様は初めから相続人ではなかったことになります。その結果、相続人はあなた一人となり、あなたがすべての財産を相続することになります。

つまり、お子様が相続放棄をすることで、あなたの取り分が増えることになります。これはまさしく、親の利益と子の不利益が直接結びつく状況であり、利益相反と判断されます。

このようなケースでは、あなたは子の代理人にはなれません。代わりに、家庭裁判所に申し立てて、子の利益を守るための中立的な立場の人、「特別代理人」を選任してもらう必要があります。

未成年者の相続放棄|手続きの流れと必要書類完全ガイド

それでは、実際に未成年者の相続放棄を進めるための具体的な手続きと必要書類について、利益相反の有無に応じた2つのパターンに分けて解説します。

パターン1:親権者が代理する場合(利益相反なし)の手続き

親子で一緒に相続放棄をするなど、利益相反にあたらない場合は、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 必要書類の収集
    まずは、申述に必要な書類を集めます。
  2. 家庭裁判所へ申述
    被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」と集めた書類を提出します。
  3. 家庭裁判所からの照会
    後日、家庭裁判所から相続放棄の意思などを確認するための照会書が送られてくるので、回答して返送します。
  4. 相続放棄申述受理通知書の受領
    問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届き、手続きは完了です。

【主な必要書類】

  • 相続放棄申述書(未成年者の場合、法定代理人の欄に親権者が署名押印します)
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(お子様)の戸籍謄本
  • (必要に応じて)法定代理人(あなた)と申述人(お子様)の関係が分かる戸籍等
  • 収入印紙800円分(申述人1人あたり)
  • 連絡用の郵便切手(金額は各裁判所にご確認ください)

※事案によっては、上記以外の書類が必要になる場合もあります。

パターン2:特別代理人を選任する場合(利益相反あり)の手続き

利益相反にあたる場合は、相続放棄の申述の前に、特別代理人を選任する手続きが必要になります。少し手間と時間がかかることを覚えておきましょう。

【Step1:特別代理人選任の申立て】

  1. 必要書類の収集
    特別代理人選任申立書や利益相反に関する資料などを準備します。特別代理人の候補者(利害関係のない祖父母など)をあらかじめ決めておくとスムーズです。
  2. 家庭裁判所へ申立て
    お子様の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
  3. 特別代理人の選任
    裁判所が候補者を審査し、問題がなければ特別代理人として選任され、「審判書」が送られてきます。

【Step2:特別代理人による相続放棄の申述】

特別代理人が選任されたら、その特別代理人がお子様の代理人として、パターン1と同様に相続放棄の申述手続きを行います。申述書には、法定代理人として特別代理人が署名押印し、家庭裁判所から受け取った審判書の謄本を添付します。

【主な必要書類(特別代理人選任申立て時)】

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)
  • 収入印紙800円分(未成年者1人あたり)
  • 連絡用の郵便切手

【期限厳守】相続放棄の「3ヶ月」はいつから数える?

相続放棄で絶対に忘れてはならないのが、「3ヶ月」という期限(熟慮期間)です。

この期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から数え始めます。では、お子様がまだ幼く、相続があったこと自体を理解できない未成年者の場合はどうなるのでしょうか。

この場合、起算点は「法定代理人である親権者が、子のために相続が開始したことを知った時」となります。つまり、お子様自身が知らなくても、あなたがご自身の相続と同時にお子様の相続が開始したことを知った日から、3ヶ月のカウントダウンが始まるのです。

この3ヶ月という期間はあっという間に過ぎてしまいます。特に特別代理人の選任が必要な場合は、選任手続きにも時間がかかりますので、できるだけ早く準備を始めることが重要です。

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