遺言書保管制度とは?【2026年最新】

自筆証書遺言の保管制度とは?まずは基本をおさえよう

「自分の財産は、残された家族のためにきちんと整理しておきたい」
そうお考えになり、遺言書の作成を検討される方は年々増えています。中でも、ご自身で作成できる「自筆証書遺言」は、手軽さから多くの方に選ばれています。

しかし、その手軽さの裏には、長年大きな課題が潜んでいました。

  • 紛失・亡失:「どこにしまったか忘れてしまった」「相続人が見つけられなかった」
  • 改ざん・隠匿:「内容に不満を持つ相続人に書き換えられた」「都合の悪い遺言を隠された」
  • 発見後の手間: 発見された後、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要で、相続人に時間と労力の負担がかかる

こうした問題を解決するために、2020年7月10日にスタートしたのが「自筆証書遺言書保管制度」です。これは、ご自身で作成した遺言書を、国(法務局)が責任をもって安全に預かってくれる画期的な制度です。

この制度を利用することで、自筆証書遺言の「手軽さ」というメリットはそのままに、紛失や改ざんといった重大なリスクを回避し、さらに相続開始後の他の遺言書の種類と比べても家庭裁判所の検認が不要になるなど、ご家族の負担を大きく軽減できます。

この記事では、司法書士である私が実際にこの制度を利用した経験をもとに、手続きの全手順から、皆様が最も気になる「亡くなった後の流れ」、そして専門家から見たメリット・デメリットまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

【参照】
本制度の概要について、より詳しく知りたい方は、以下の法務省の公式ページもご参照ください。
自筆証書遺言書保管制度について|法務省

【司法書士の体験談】遺言書保管制度を利用した全手順

ここからは、私が実際に体験した流れに沿って、遺言書保管制度を利用する全手順をステップごとに解説します。机上の空論ではなく、現場で気づいたポイントも交えてお伝えしますので、ご自身で手続きをされる際の参考にしてください。

司法書士に遺言書保管制度について相談し、安心した表情を浮かべるシニア夫婦。

ステップ1:遺言書の作成と準備のポイント

まず、保管してもらう遺言書そのものを作成します。法務局は遺言の内容について相談に乗ってくれるわけではありません。あくまで「形式的な要件」をチェックするだけです。そのため、最初のこのステップが最も重要と言えます。

守るべきルールは以下の通りです。

  • 用紙:A4サイズの紙を使用します。罫線や柄があっても構いませんが、両面への記載はできません。
  • 余白:上部5mm、下部10mm、左側20mm、右側5mmの余白を必ず確保してください。この余白がないと、受け付けてもらえません。
  • ページ番号:複数枚にわたる場合は、各ページに「1/3」「2/3」のようにページ番号を記載しましょう。
  • ホチキス留め禁止:複数枚になっても、ホチキスで留めず、バラバラの状態で持参します。

特に注意したいのが、財産を一覧にする「財産目録」です。
遺言書の本文(「誰に何を相続させる」といった部分)は必ず自書でなければなりませんが、財産目録についてはパソコンでの作成が認められています。不動産の登記事項証明書や、預貯金通帳のコピーを添付することも可能です。

ただし、パソコンで作成した財産目録や、通帳のコピーを添付する場合は、その全てのページに、遺言者本人が署名・押印する必要があります。1ページでも忘れると不備となりますので、細心の注意を払いましょう。

ステップ2:必要書類の収集と申請書の作成

遺言書が完成したら、次は申請に必要な書類を準備します。抜け漏れがないよう、リストで確認しましょう。

  • 遺言書保管申請書:法務局の窓口でもらうか、ウェブサイトからダウンロードします。パソコンで入力できるPDFファイルが便利です。
  • 作成した遺言書:ホチキスで留めず、封筒にも入れない状態で持参します。
  • 本籍の記載がある住民票の写し:発行から3ヶ月以内のものが必要です。
  • 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書など、顔写真付きの公的な身分証明書から1点が必要です。
  • 手数料:1通あたり3,900円です。収入印紙で納付します。法務局内や近くの郵便局で購入できます。

申請書は、法務局のウェブサイトにある申請書様式からダウンロードできます。手書きでも構いませんが、パソコンで入力すると修正も簡単で、読みやすく作成できるためおすすめです。

ステップ3:法務局への予約方法と当日の流れ

書類がすべて揃ったら、いよいよ法務局へ申請に行きます。この制度の手続は事前予約が必要です。予約なしで来庁した場合、長時間お待ちいただいたり、その日に手続ができないことがありますので、必ず事前に予約を取りましょう。

予約は、「法務局手続案内予約サービス」という専用サイトからオンラインで行うのが最もスムーズです。電話での予約も可能ですが、ウェブ予約なら24時間いつでも空き状況を確認しながら申し込めます。

【当日の流れ】

  1. 受付:予約時間少し前に法務局へ行き、予約している旨を伝えます。
  2. 書類提出と本人確認:担当の職員の方に、準備した書類一式を提出します。ここで本人確認が行われます。
  3. 遺言書の形式チェック:職員の方が、遺言書の余白や署名・押印、日付などの形式的な要件を丁寧に確認します。内容の有効性に関するアドバイスはありません。
  4. 手数料の納付:問題がなければ、収入印紙を申請書に貼り付けて納付します。
  5. 保管証の受領:最後に、遺言者の氏名、生年月日、そして遺言書が保管されている法務局名と「保管番号」が記載された「保管証」を受け取ります。この保管証は、将来ご自身が遺言書を閲覧したり、撤回したりする際に必要となる大切な書類ですので、厳重に保管しましょう。

受付から保管証の受領までの所要時間は、目安として約1時間程度かかることがあります。非常にスムーズで、職員の方の対応も丁寧な印象でした。ただし、遺言書に形式的な不備があると、修正して後日再申請となる可能性もありますので、事前の準備が肝心です。

遺言者が亡くなった後はどうなる?2種類の通知制度を解説

「法務局に預けたのはいいけれど、自分が亡くなった後、その存在は家族にどう伝わるの?」
これは、この制度を検討する方が抱く最も大きな疑問であり、そして最も重要な点です。

ご安心ください。この制度には、遺言書の存在を相続人等に知らせるための、強力な2種類の「通知制度」が用意されています。

遺言書保管制度の通知制度を比較する図解。「関係遺言書保管通知」と「死亡時通知」の目的、タイミング、通知先の違いを解説。

【参照】
通知制度の詳細については、法務省の公式解説ページも参考になります。
10 通知 〜通知が届きます!〜 | 自筆証書遺言書保管制度

①相続人全員に伝わる「関係遺言書保管通知」

これは、相続人の公平性を保つための非常に重要な仕組みです。

遺言者が亡くなった後、相続人のうちの誰か一人(例えば、長男)が法務局で遺言書の内容を閲覧したり、「遺言書情報証明書」の交付を受けたりすると、その手続きが行われたことが、他のすべての相続人(法定相続人全員)に通知されます。

これにより、「長男だけがこっそり遺言内容を確認し、自分に不利な内容だったからと他の兄弟にその存在を隠しておく」といった事態を防ぐことができます。一人が動けば、関係者全員が遺言書の存在を知ることになる、非常に優れた仕組みです。

この通知書には遺言の具体的な内容は書かれていませんが、「〇〇法務局に、被相続人〇〇の遺言書が保管されています」という事実が記載されています。これを受け取った他の相続人は、自分でも法務局に請求手続きをすることで、遺言の内容を確認できます。

②指定した人に届く「死亡時通知(指定者通知)」

こちらは、遺言者が亡くなった後、そもそも誰も遺言書の存在に気づかない、という事態を防ぐための仕組みです。これはオプション(任意)ですが、ぜひ利用を検討すべき機能です。

遺言者は、遺言書を預ける際に、「死亡時通知」を受け取る人を最大3名まで指定できます。指定できるのは、推定相続人、受遺者(遺言で財産を受け取る人)、遺言執行者などです。

この設定をしておくと、遺言者が亡くなった事実を法務局が公的な書類(戸籍など)で確認できた時点で、指定された人に対して「遺言書が保管されていますよ」という通知が自動的に送付されます。

例えば、特に信頼しているお子様の一人や、遺言執行者に指定した専門家などを通知先に指定しておけば、万が一の時も、遺言書の存在が誰にも知られずに手続きが進んでしまうという最悪の事態を確実に防ぐことができます。相続開始の「最初のスイッチ」を押してくれる、重要な役割を担う通知です。

【相続人向け】通知が届いたらどうする?遺言内容の確認方法

では、逆の立場で、ご家族が亡くなった後に法務局からこれらの通知を受け取ったら、どうすればよいのでしょうか。

通知書には遺言の具体的な内容は記載されていません。内容を確認するには、相続人ご自身が法務局で以下のいずれかの手続きを行う必要があります。

  1. 遺言書情報証明書の交付請求:遺言書の内容が記載された証明書(写し)の交付を請求します。この証明書があれば、法務局での閲覧は不要です。不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きには、この証明書が必要となります。手数料は1通1,400円です。
  2. 遺言書の閲覧請求:法務局のモニターで、保管されている遺言書の原本画像データを閲覧します。手数料は、モニターによる閲覧が1回1,400円、原本の閲覧が1回1,700円です。

遺言書情報証明書の交付請求やモニターによる閲覧請求は、全国の遺言書保管所で手続が可能です。一方、遺言書原本の閲覧請求は、遺言書が保管されている遺言書保管所で行う必要があります。請求には、ご自身が相続人であることを証明するための戸籍謄本等や、本人確認書類が必要となります。

あなたに最適な遺言方法は?制度のメリット・デメリット

ここまで詳しく解説してきましたが、改めてこの制度のメリットとデメリットを整理し、どのような方に特に向いているのかを考えてみましょう。

遺言書保管制度のメリット5つとデメリット3つを比較する図解。紛失防止や検認不要といった利点と、内容の有効性保証がないなどの注意点を解説。

遺言書保管制度の5つのメリット

  1. 紛失・改ざんリスクを大幅に低減:国の機関である法務局が原本を厳重に保管するため、自宅保管と比べて紛失、盗難、改ざん、隠匿などのリスクを大きく減らせます。これが最大のメリットです。
  2. 家庭裁判所の「検認」が不要:通常、自筆証書遺言は発見後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要で、相続人全員の戸籍を集めるなど、数ヶ月かかることもあります。保管制度を利用すればこの検認が不要となり、相続人の時間的・金銭的負担を大幅に軽減できます。
  3. 費用が非常に安い:申請手数料はわずか3,900円です。後述する公正証書遺言が数万円から数十万円かかるのに比べ、圧倒的に低コストで安全性を確保できます。
  4. 死亡後の通知制度で発見につながりやすい:解説した2種類の通知制度により、遺言書の存在が相続人等に伝わらないリスクを抑えられます。
  5. 全国どこでも手続き可能:遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地・本籍地・所有不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所で行います。なお、遺言書情報証明書の交付請求やモニターによる閲覧請求は、全国の遺言書保管所で手続が可能です。

知っておくべき3つのデメリット・注意点

  1. 遺言の内容の有効性は保証されない:法務局はあくまで形式(日付、署名、押印、余白など)をチェックするだけで、遺言の内容が法的に有効か、将来トラブルの種にならないか、といった点までは確認してくれません。内容に不備があれば、せっかく保管しても無効になるリスクは残ります。
  2. 本人が必ず法務局に出向く必要がある:申請は代理人では行えず、必ず遺言者本人が法務局の窓口に行く必要があります。そのため、ご病気や高齢で外出が困難な方には利用が難しい場合があります。
  3. 住所変更等の届出が必要:遺言書を預けた後、遺言者や受遺者の住所・氏名に変更があった場合、法務局への変更届出が必要です。これを怠ると、いざという時に通知が届かない可能性があります。

専門家としての視点

この制度のデメリットとして最も大きいのは、「本人が法務局に出向く必要がある」という点です。ご高齢の方や、施設に入所されている方、病院に入院されている方など、外出自体が大きな負担となるケースは少なくありません。ご自身で法務局に行くことが難しい場合には、この制度は不向きである可能性があり、別の方法を検討する必要があります。

【比較】公正証書遺言とどちらを選ぶべき?

遺言書の作成を考えたとき、この保管制度と必ず比較対象になるのが「公正証書遺言」です。どちらがご自身に適しているか、判断の参考にしてください。

項目自筆証書遺言保管制度公正証書遺言
作成場所自宅等で自由に作成公証役場
費用3,900円数万円~数十万円(財産額による)
内容の確実性保証されない(自己責任)極めて高い(公証人が内容を確認)
本人の出頭必須公証人に出張してもらうことも可能
証人不要2名必要
検認不要不要
自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言の比較

【結論】

  • 費用を抑えたい、内容に自信がある、自分で法務局に行ける方自筆証書遺言保管制度
  • 費用がかかっても内容の法的な確実性をできる限り高めたい、将来の紛争リスクをできるだけ抑えたい、外出が難しい方公正証書遺言

どちらの方法にも一長一短があります。ご自身の状況や、どのような遺言書の種類が最適か判断に迷う場合は、一度専門家にご相談されることをお勧めします。

遺言書保管制度の手続きは司法書士への依頼がおすすめ

「制度のことはよくわかった。でも、やっぱり自分で遺言書の内容を正しく作れるか不安…」
「書類を集めたり、予約したりするのは面倒だと感じてしまう…」

そのように感じられた方も多いのではないでしょうか。自筆証書遺言保管制度は非常に優れた制度ですが、そのメリットを最大限に活かすには、「保管されている遺言書の内容が法的に完璧であること」が大前提となります。

そこで、私たち司法書士のような専門家にご依頼いただくことをお勧めします。

司法書士に依頼する3つの大きなメリット

  1. 法的に有効で「争族」を防ぐ遺言書を作成できる
    これが最大のメリットです。私たちは、ご依頼者様のご希望を丁寧にお伺いした上で、特定の相続人の遺留分を侵害していないか、表現が曖昧で解釈の余地がないかなど、将来の紛争リスクを徹底的に排除した、法的に有効な遺言書の文案を作成します。
  2. 面倒な書類作成や法務局とのやり取りを代行できる
    遺言書の作成はもちろん、保管申請書の作成、住民票などの必要書類の取得代行、法務局への予約まで、手続きの大部分を代行することが可能です。ご依頼者様には、完成した遺言書の内容をご確認いただき、最終的に法務局へご同行いただくだけで済みます。
  3. 死後の手続きまで一貫して任せられる安心感
    私たちは、遺言書で「遺言執行者」に就任することも可能です。遺言執行者とは、亡くなった後に、遺言の内容を忠実に実現する責任者のことです。私たちを遺言執行者に指定しておけば、万が一の際、預貯金の解約や不動産の名義変更といった複雑な相続手続きを、ご遺族に代わって責任をもって遂行します。当事務所では、こうした遺産承継(整理)業務も一貫してサポートしております。

司法書士への依頼費用とサポート内容

当事務所では、ご依頼者様のニーズに合わせて、様々なサポートプランをご用意しております。

例えば、「遺言書の作成から保管申請までをフルサポートしてほしい」「遺言書の内容だけチェックしてほしい」といったご要望に柔軟に対応可能です。

費用はサポート内容によって異なりますが、ご相談いただければ、まずはお客様の状況を詳しくお伺いした上で、最適なお見積りを提示させていただきます。詳しくは当事務所の料金ページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。初回の相談は無料です。

まとめ|遺言書保管制度で安心な相続準備を

今回は、自筆証書遺言書保管制度について、司法書士の体験談を交えながら詳しく解説しました。

この制度は、自筆証書遺言の「手軽さ」を活かしつつ、紛失や改ざん等のリスクを抑える仕組みを低コストで利用できる選択肢です。ご自身の想いを確実に未来へ繋ぎ、残されたご家族の負担を減らすために、非常に有効な手段と言えるでしょう。

しかし、最も大切なのは、その「想い」を記した遺言書の中身です。形式は整っていても、内容に不備があれば、かえって家族間の争いの火種になりかねません。

「自分の場合はどう書けばいいのだろう?」
「家族が揉めないためには、どんな配慮が必要だろう?」

少しでも不安や疑問を感じたら、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの想いを法的に確かな形にし、未来の安心へと繋げるお手伝いをさせていただきます。

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