相続の方法には、相続放棄の他、単純承認と限定承認があります。
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・単純承認
単純承認とは、亡くなった方のすべての資産負債を無限に承継することです。
相続放棄、限定承認の熟慮期間内にしなければ、民法第912条第2号の法定単純承認(民法921条第2号)事由に該当するため、単純承認したものとみなされます。
このほかにも、いくつか単純承認したものとみなされる場合があります。
・法定単純承認したものとみなされる場合
①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為、短期賃貸借の場合を除く)
例:財産の譲渡、家屋の取壊し、預貯金の費消、債権の取立て
※「処分」の判断基準に関しては25.相続放棄ができる期限に注意 の項目に詳しく記載しています。
②相続放棄や限定承認をした場合であっても以下の行為をすれば法定単純承認となります。
- ⅰ 相続財産の一部または全部を隠したとき
例:原則的には遺品は相続財産に含まれないが、その遺品の形見分けとして、新品同様の洋服・毛皮などを全て持ち帰る行為は形見分けを超えるため隠匿に当たる
- ⅱ 相続人の財産を私(ひそか)に消費したとき
私に消費するとは、被相続人の財産に対する債権者(相続債権者)を害することを分かったうえで、相続財産を消費することをいいます。
- ⅲ わざと財産目録へ記載しなかった場合
相続債権者を害する意図をもって相続財産を財産目録に記載しないこと
相続をするつもりがなくても、上記のような行為をしてしまうと単純承認したこととみなされてしまいますので、相続放棄をお考えの方は、特に注意が必要です。
・相続放棄
相続放棄の申述を行った場合、相続人は被相続人の相続人ではなかった扱いとなります。
当然、プラスの財産もマイナスの財産も全く引き継ぎません。メリットは、負債を支払わなくてよくなるということです。デメリットは、一部引き継ぎたい財産があったとしても、その一部だけを承継することができないことです。相続放棄では相続財産の柔軟な承継ができません。具体的な手続き方法については、別に解説ページがありますので、そちらを参考にしてください。
・限定承認
限定承認とは、亡くなった方の資産と負債の合計がプラスかマイナスかわからないときなどに、相続財産の範囲内でのみ債務および遺贈を弁済するという限定付きで相続の承認をする手続きのことです。
・限定承認の方法
この手続きは、相続放棄同様に3か月の期間制限があり、相続人全員で家庭裁判所へ申出る必要がありますので、注意が必要です。
・限定承認申立て後の手続き
限定承認の申立てが受理された以後は、限定承認者または相続財産管理人(相続人が複数の場合は相続人の中から選ばれる)が、官報へ限定承認した旨の公告を出すなどの方法による債権者の調査や、民法所定の財産の換価や弁済等の相続財産の清算の手続きを行うこととなります。