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・自己破産手続きとは
破産手続きとは、現在お持ちの資産や収支状況では、今ある借金等を完済することができない方が、支払いができない状況にあることを自分から裁判所に対して申し出を行い、破産の開始および免責の許可を受けることによって、借金等の支払いから免れることができる手続きです。
・破産申立と免責許可申立てについて
自己破産手続きとは、破産と免責許可の二つの申立てを併せて行う手続きです。
破産申立については支払い不能の状態であること、免責許可申立については免責不許可事由に該当しないことが要件となります(詳しいことは後掲「自己破産手続きができる方」をご参照ください。)。ですから、支払い不能であることが認められたとしても、免責の許可が得られなければ、ご自身の借金等の支払い義務から逃れられることができませんのでご注意ください。
なお、免責許可の要件を満たしていない場合でも、裁判所の判断でなされる裁量免責によって免責を受けられることも少なからずあり、統計上でも90%以上の方が最終的に免責の許可を受けられていますで、「免責不許可事由に該当しそうだから」という理由のみで破産手続きを断念する必要はないといってよいでしょう。
ただし、税金や損害賠償債務、扶養に関する債務など(これらを非免責債権といいます。)は破産手続きでは免除されませんので、特にご注意ください。なお、債務整理のどの手続きにおいても、税金の免責を受けられる手続きはありません。
・破産管財事件・同時廃止事件について
個人破産の手続きの類型として、破産管財事件と同時廃止事件があります。
破産法上は、事件ごとに破産管財人がつくことが原則とされており、この類型を破産管財事件といいます。これは裁判所から選任された破産管財人が、申立人の財産をお金に換えて各債権者に配当したり、申立人の免責を許可すべきか調査等が行われる手続です。
これに対して、破産管財人がつかず、比較的簡易に手続きが行われる場合を同時廃止事件といいます。実際は、配当や調査等が必要ないと判断される事案が多いため、同時廃止事件となる場合が多く見受けられます。
・自己破産手続きを利用できる方(自己破産、免責許可の要件)
- 借金の支払いができない状態であること(支払不能の状態)
- 借金の原因や経緯が免責してもよいと判断されるものであること
(免責不許可事由に該当しないこと)
の2点です。
・自己破産を利用できるかどうかについての注意点
①支払不能の状態
支払不能の状態かどうかについては、おおむね3~5年程度で支払いが完了できない状態であることなどと表現されてたりしますが、明確な基準ではなく、裁判所において総合的に判断されるものですので、あくまでも手続き選択する上での一つの目安とお考えください。
また、お持ちの財産(不動産、自動車、生命保険、退職金、株式等)をお金に換えれば支払ができる可能性がある方は、この要件を満たさない場合があります。
②免責不許可事由に該当しないこと
原則的に免責ができないとされる事由が破産法上規定されています。法律の表現を少しわかりやすく、以下、おおまかな例を挙げます。ただし、前項でお示しした通り、該当するからといって免責許可が絶対に得られないわけではありませんから、該当するというだけで破産手続きを諦めるべきではなく、破産管財事件(費用が多くかかってしまう)となる可能性の判断の目安として考えていただいた方がよいでしょう。
ⅰ 債権者にとって不利益な行為をした場合
財産をわざと隠す(隠匿)、壊す(損壊)、減らす(不利益処分)行為や、一部の債権者のみに返済(偏波弁済)する、わざと一部の債権者だけ破産手続きの債権者に載せない(その債権者にだけ支払い義務が残って不公平)などがこれにあたります。
親族からの借入なども含まれますので、ご注意ください。
ⅱ ご自身のお金の使い方に問題がある場合
収入にふさわしくない高い買い物(浪費)をしたり、ギャンブル等(賭博)や株取引等等(射幸行為)でたくさん債務を増やすなど、ご自身のお金の使い道に問題がある場合
ⅲ 借りる相手に対して嘘をつくなどをして借り入れなどを行っていた場合
返せる(払える)見込みがないのがわかっているのに、嘘をついて借入れをしたり、クレジットカードでものを買ったりした場合
ⅳ 直近7年以内の同様の手続きをしていた場合
原則的に、過去7年以内に破産手続きや個人再生手続きを行っている方は免責許可が受けられません。
ⅴ 破産手続き中、裁判所や管財人等の要請に適切に応じない場合
裁判所や破産管財人が免責を判断する上で必要な調査等を妨げるような行為をすると免責を受けられなくなる場合があります。
・自己破産をすることによるメリット
- 借入金等の債務の支払いが免除されます。
- 既に給与差し押さえがされていた場合、これを止めることができます。
- 破産開始決定後に取得した財産は自由に使うことができます。
シンプルですが、生活の再建方法としての効果
・自己破産をする上でのデメリットや制限および注意点
1、同時廃止事件、破産管財事件共通のデメリット
① 高価な財産が失われる
ご自身の高価な財産は基本的になくなるものとお考え下さい。ただし、破産手続き上で財産として取り扱われるもの(お金に換える対象となるもの)は、不動産や価格が20万円以上のものです。通常の家財等の法律上差押えが禁止されている財産等はそのまま残りますのでご安心ください。
また、自動車については、管轄裁判所ごとに判断基準がありますので一概には言えませんが、登録からある程度年数が経過した自動車は残してもらえる余地は十分にあります。
このほか、財産としてよく見落とされがちなのは生命保険の解約返戻金と現在のお勤め先の退職金債権があげられます。
生命保険解約返戻金の場合、少額の掛金の契約が複数ある時など、合計すると20万円を超えていた場合、裁判所の運用基準によっては、破産管財事件の対象となってしまうこともあります。
退職金債権の場合、お勤めの会社に退職金の規定自体がないと思っていたら、実際はあったり、状況によって価格の計算方法が変わるため、20万円以下と考えていたが、実際は超えてしまっていたりすることがあります。また、財産を失うかどうかとは直接関係ありませんが、勤務期間が長い(3~5年以上)場合、必要書類として退職金の有無・金額がわかる書類の提出が求められます。会社に内緒で手続きをされている方は、取得方法に苦慮されるケースもありますので、ご注意ください。
② 一部資格が制限される
破産手続き中、一定の資格が取得できなかったり、その資格を使って仕事ができなくなる場合があります。例えば、弁護士等の主要な士業の他、保険外交員、警備員、宅地建物取引士などがそれにあたります。
なお、会社の取締役をされている方は、破産手続きの開始によって、一旦退任することになりますが、破産手続き中でも再度選任されれば取締役になることはできます。
③ 官報に掲載される
日常生活であまり見かけないと思いますが、破産したとき、免責許可を受けたときに、官報という、いわば政府が発行する新聞のようなものに破産された事実と住所氏名が掲載されます。
④ 裁判所へ出頭する必要がある
破産申立をした後(ない場合もあります)と免責の許可を受けるときの通常1~2回、平日の日中の時間帯で裁判所へ出頭する必要があります。
⑤ 信用情報機関へ登録がされる
自己破産した場合、7年~10年位は、いわゆる「ブラックリスト」に登録されるため、この間の新たな借入れ等の審査が通りにくくなります。
⑥ 保証人が請求を受ける
ご自身が支払いを免れても、対象の債務について保証人がいる場合は、保証人が請求を受けることとなります。
⑦ 免責されない債権がある
非免責債権といわれますが、税金や養育費、個人事業主の場合の従業員への給料、不法行為に基づく損害賠償金等があります。これらの債務は、破産手続き上の免責許可を受けたとしても支払い義務はなくなりませんのでご注意ください。
2、破産管財事件特有のデメリットや制限および注意点
破産管財事件となった場合は、上記1の他にもいくつか制限等がありますので、主だった例を以下にあげます。
① 管財費用が必要となる
破産申立ての費用の他に20万円から50万円の管財費用が発生します。管財人の業務量等を考慮して裁判所が決定します。
② 郵便物が破産管財人へ転送される場合がある
裁判所が定める一定の期間、郵便物が破産管財人に転送される手続が行われる場合があります。
③ 居住地等が制限される
住居の移転や長期出張、旅行に裁判所の許可が必要となります。
④ 破産管財人との面談等がある
状況に応じて破産管財人から電話や管財人の事務所で、手続きに関連する種々の説明を求められたりすることがあります。
⑤ 債権者集会が開かれる
上記1の④に加えて3か月に1回程度の割合で、破産管財人が債権者に対する状況報告を行う債権者集会が開かれる場合がありますので、この時にも裁判所へ出頭する必要があります。